35年くらいになるだろうか。
毎年正月に箱根駅伝を見るようになって。
きっかけは父が見ていたから。
楽しみはいくつもある。
先ずは往路。
エースが集う“花の2区”。
各校の看板選手がぶつかり合う、あの独特の緊張感。
そして、5区天下の険・箱根山に挑む若者たち。
あの過酷な上りで、一気に順位がひっくり返る。
毎年、必ずと言っていいほどドラマが生まれる場所だ。
ただ速いだけじゃない。
強さと覚悟が試される区間だと思う。
「その1秒を削り出せ」
この言葉が象徴するように、
彼らは極限の中で、ほんのわずかな差にすべてを懸けている。
そして復路。
ここから空気が少し変わる。
襷は、ちゃんと繋がるのか。
あと一歩届くのか、それとも無情にも繰り上げスタートになるのか。
中継所に近づくにつれて高まる緊張感。
待つ選手と、走ってくる選手。
その距離が縮まるたびに、見ているこちらの呼吸も浅くなる。
間に合うのか——。
繋がった瞬間の安堵と歓喜。
届かなかったときの、あの何とも言えない空気。
あの数分間に詰まっているものは、あまりにも大きい。
そして、シード権争いは最後の最後まで分からない。
気づけば、自分の中で箱根駅伝は
「ただのスポーツ」ではなくなっていた。
そんな自分にとって、ひとつの夢があった。
あのルートを、自分の目で見ること。
そして今回、ついにその機会が来た。
箱根駅伝のコースをドライブする旅行に行くことになった。
泊まる場所は、箱根小涌園。
5区の途中にある、まさに“あの場所”だ。
正直、それだけでテンションはかなり高い。
ただ——
妻は、この話にほとんど興味がないらしい。
「あぁ...そうですか...」くらいの温度感。
まあ、無理もない。
30年積み重ねてきたものを、共有しているわけじゃないから。
それでも、自分にとっては特別な旅だ。
テレビの中で見ていた景色を、実際に走る。
あの選手たちが走った道を、辿る。
たぶんこれは、ただの観光じゃない。
自分の中の“記憶”をなぞる旅なんだと思う。
せっかくなら、妻にも楽しんでもらいたい。
でも同時に、自分自身も思い切り楽しみたい。
そんな少しだけわがままな気持ちを抱えながら、
箱根へ向かう。
業務部 萬谷



